大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)408号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて判断する。

成立について争いのない甲第二号証(特許出願公告昭三二―三九四九号特許公報)によれば、引用例の発明は、研削機におけるテーブルフード密閉装置に係るもので、ゲルマニウム等のような高価な金属の研削研磨の際に生ずる金属の微細粉末を悉く筐体内に捕集して、徒らにこれを四散逸失せしめないようにし、その回収を容易ならしめることを目的の一つとするものであるところ、願書に添附した図面(別紙図面(二)参照)に示すとおり、テーブル5の上面には溝10が設けてあり、この溝は研削によつて生じた被加工物の微細な粉末を混入した研削液の流路で、その液はテーブル5に設けた流出管11から流出して分離装置付研削液供給装置Aに入り(第1図参照)、ここで研削液中に混入された金属粉末と研削液とを分離し、濾過された研削液は再び研削機に自動供給されるようにしたものであることが認められる。

審決(成立について争いのない甲第三号証)は、引用例においては、被加工物研削の際に飛散し筐体で捕集された金属の微細粉末が溝10中の研削液に浸漬することなしに集積されるものと認定しているが、右のように認定すべき根拠は何もない。この点に関し被告は、筐体で捕集された金属の微細粉末は研削液に比較して比重が大であるから、あたかも河川において上流から水流で運ばれてきた土砂粒が平野部に至つて沈降して堆積する現象により理解されるように、外側に向つてゆるやかに上昇するように傾斜している筐体下部の縁枠の内壁面に至つて堆積することは当然予想されることである旨主張するが、前認定のように、引用例においては、被加工物を研削して生ずる微細な金属粉末は、筐体内で研削液中に混入され、その液は溝10、流出管11を通つて分離装置付研削液供給装置Aに入り、そこで研削液と金属粉末は分離され、液は再び研削機に供給されるのであるから、仮に研削液に混入して溝及び流出管を通つて分離装置付研削液供給装置に入らない金属粉末があるものとしても、その粉末は、筐体下部の縁枠の内壁面に堆積されるほどの量のものではないものといわざるを得ないから、被告の右主張は理由がないものというべきである。

したがつて、審決の右の認定は誤つているものといわなければならず、右誤認を前提として本願発明と引用例との一致点を認定した審決の判断も誤つているものといわなければならない。

しかしながら、成立について争いのない乙第一号証(昭和一四年実用新案出願公告第六八六九号公報)によれば、多量の切削屑を生じ多量の切削用潤滑剤を使用する旋盤等の工作機械において、深皿状の潤滑剤回収用の容器体を設け、これに接続して、落下する切削屑を受ける、ゆるやかに上昇するような傾斜面を設け、潤滑剤のみは容器体に溜め、切削屑は傾斜面上に堆積させた後、適宜の手段で外部に排出するようにしたもの(別紙図面(三)参照)は、工作機械の技術分野においては周知のものということができる。

そうすると、引用例には、前述のとおり、研削機における研削油飛散防止用のテーブルフード密閉装置が示されており、テーブル上面には微細金属粉末の混入した研削液が流れ込む研削液回収用の溝が設けられているのであるから、本願発明におけるように、横型中ぐり盤の被加工材挟持装置を切削油飛散防止用包囲体で包み、テーブル上に深皿状容器体を設け、その容器体の後方部分をゆるやかに上昇するように傾斜させた構成を採り、それにより容器体に切削油を溜めてこれを回収すると同時に傾斜面に切粉を集積させて排出可能にするようなことは、当業者が引用例及び前記周知技術から容易に想到し得たものというべきである。

そうすると、審決は前記のとおり引用例記載の技術内容の認定を誤り、ひいては本願発明と引用例のものとの対比において一致点の認定を誤つたものではあるが、本願発明は引用例の記載から、当業者が容易に発明することができたものであるとした審決の結論は、結局において正当であり、前記認定の誤りは、これをもつて審決を取消すべき違法のものであるとすることはできない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「横型中ぐり盤の切粉集積兼切削油回収装置」とする発明(以下「本願発明」という。)につき、昭和四七年一〇月二一日特許出願をしたところ、昭和五一年一一月一七日拒絶査定を受けたので、昭和五二年二月七日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五二年審判第一四二八号事件として審理されたが、昭和五五年一一月一七日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その審決の謄本は同年一二月二日原告に送達された。

二 本願発明の要旨

ベツドの一端部に主軸頭を立設し、その主軸頭の一端面に水平方向に突設したボーリングバーを取付け、前記ベツドの他端部にはボーリングバーの軸方向に摺動自在なテーブルを載置し、そのテーブル上に被加工材挟持装置を立設し、さらにそれらを切削油飛散防止用包囲体で包み、前記テーブルの後部に切粉集積兼切削油回収用深皿状容器体を設け、その容器体の後方部分を容器体の後端部に向つてゆるやかに上昇するように傾斜させた横型中ぐり盤の切粉集積兼切削油回収装置。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

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